【 Waxy Journal No.3 “Bedale” 】
TOKYO BRANCH スタッフの廣田があらゆる角度からワックスジャケットの魅力に迫っていく「Waxy Journal」。第3回の今回は、Barbour の言わずと知れた名作モデル「Bedale(ビデイル)」に焦点を当てます。
短いジャケット丈で取り回しのしやすさが魅力ですが、歴史やディテールに注目していけばグッと愛着が増していくこと間違いなし。Barbour と言われて多くの人が最初に思い浮かべるであろう銘品は、ブランドを語る上でも重要なピースとなっているようです。
廣田(以下「廣」):ワクシージャーナル第3回。これまでベルスタッフ、メンテナンスと少し変化球気味な企画が続いてましたので、今回は基本に立ち返ろうということで一番ポピュラーなモデルである「ビデイル」について掘り下げて行きたいと思います。
山岸(以下「山」):ビデイルは日本では最も有名で、いわゆるベストセラーかと。お持ちの方も一番多くて、バブアーと言われて思い浮かべるモデルの代表的な存在だと思います。
ですが、バブアーの歴史で見ていくと決して古参のモデルというわけではないんです。
廣:そうなんですね。確か19……。
山:色々と言われているのが、リリースは1981年だけど、生産自体は1980年から行われてたみたいです。
廣:そうでしたそうでした。でもそうやって数字にしてみると、ビンテージ的には本当に結構最近ですね。以前このコーナーでもスポットを当てたベルスタッフのトライアルマスターとかは1950年代とかでしたから。
山:そうなんですよね。人気からするともっと歴史が古そうですが、ビデイルはビンテージと呼ばれる数あるモデルの中でも新しい方から数えた方が早いくらいですね!
廣:そんなビデイルですが、ところで何用でしたっけ?
山:乗馬!上流階級の嗜みのようです。
廣:これは結構知っている人も多いですね。ちなみにどのへんが乗馬用としてのディテール?
山:んー、見た目でわかりやすいところだとダブルベンツかな。
廣:確かに特徴的ですね。これってテーラードジャケットのディテールってイメージがありますけど、その辺りはどうなんでしょう?
山:ジャケットを選ぶ際にはセンターかサイドかで迷うところでもありますよね。
それまでのバブアーの他のモデルは大体オーバーコートで、ベントの類はほとんど無かったので一目瞭然です!
馬に跨ったとき、ジャケットの裾が鞍と干渉してシルエットが崩れたりしないように左右が開いているんです。
自転車でもバイクでも、何かに跨ってみると分かるんですけど、左右のベントの開きでシルエットがすごくいいですね。
あの丈感ならセンターベントよりダブルベンツがなんだなあと。
言っていた通りスーツのジャケットとかに近い丈感なので、さらっと羽織れますし。
廣:着てみると丈感も相まってかすごくコンパクトに感じられますね。山岸的に他に面白いところある?
山:んー、地味だけどライニングのナイロン部分かな。(笑)
これも言っちゃえば作るときも楽なのはフルライニング。だけど乗馬っていうアクティビティーを考えたとき、擦れやすい腰からしたの部分は摩耗なんかに強いナイロンを使っている。実用着としてのデザインしたんだな〜って感じることのできる部分ですね。
廣:さりげないところですけど手が込んでるってことですね。そういえば、BWJMはワックスジャケットの修理もやってるじゃないですか? ジャケットを実際に修理する身としては、やっぱり大変?
山:ナイロン部分に干渉する修理だと手間は増えるし、気を遣う部分ではありますね。
廣:なるほど。個人的にはリブも特徴的で珍しいディテールだなあと思います。リブ初登場はビデイルですよね?
山:ですね。リブは乗馬用のモデルにしかないディテールで、言う通りすごく特徴的。オーバーコートだったらまず付かない。
さっきのベントやライニングのナイロンもそうだけど、用途として想定されるアクティビティーに最適化されて作り込まれているのはバブアーのものづくりの魅力でもありますね。
廣:ビデイルはそう言うブランドの信念というか真髄みたいなものが、強く感じられるモデルってわけですね。
左からダブルベンツ・ナイロン仕様のライニング・袖先のリブ。
イギリスの伝統的な文化である乗馬用へと最適化されたバックグラウンドが
ディテールの随所に散りばめられている。
廣:ディテールの変遷についてもお聞きしたい。最初はいわゆる4つポケと呼ばれる、左右の胸を含む4つのフラップポケットで構成されるデザインでしたよね。
山:ですね。確固たる人気を誇るビンテージです。
廣:他のモデルの中でもあまりみない、新鮮なディテールですよね。
山:そうですね。でもスペイとかは案外近いのかもしれないなと思ったりします。
廣:あー。なるほど言われてみればそうですね! ところで全然余談なんですけど、昔のカタログの写真でビデイルの胸ポケットにレザーグローブ入れてるのを見たんですけど、めっちゃいいなって思いました。
山:あれは憧れるよね。
廣:今年の冬はやってみようかな(笑)
ちなみに、4つポケからハンドウォーマーにデザインが変更された背景はやはり利便性が理由なんですかね?
山:カントリーウェアだけではなく街着としても着れるようにシフトチェンジって言うのがあったのかなと思います。やっぱり手は寒い。(笑)
廣:手を守りたかったんですね。実際、ハンドウォーマーは重宝しますよね。あるとついつい手を突っ込みたくなる
山:ハンドウォーマーがあるのとないのだと使い勝手が全然違うからね。でもやはり古い時代のディテールである4つポケに心惹かれたりもする。なので好みが割れるところでもあります。同じ名前のモデルだけど、ルックスも違うし、機能も違う。それぞれに良さがあるので、ぜひどっちも試してみてほしいです。
胸部がハンドウォーマーに変わったことで、見栄えはよりミニマルでスッキリした印象に。
廣:ハンドウォーマーに変更されてからカラー展開も増えましたね。基本カラーのセージとネイビーに加えて……
山:あ、そういえばちなみにですが、バブアーのネイビー初登場はビデイルなんです。
廣:へー、そうなんだ!
山:ネイビーって、ブラウンやグリーンなんかのナチュラルな色が中心のカントリーウェアだと本来あんまり使わない色なんですよね。なので紺色の登場はブランド的には革新的な出来事だったのかなって思います。
廣:確かにネイビーはより街着感があると言うか、都市の風景にもよく馴染む雰囲気がありますもんね。山岸さんはビデイルに限らず、ネイビーを好んで着ているイメージがあります。
山:青は元々好きな色ですし、最近は何だか特に気に入ってました。
廣:Barbour のネイビーって鉄紺っぽい落ち着いた色なので他の洋服とも合わせやすいですしね。
さて、ハンドになってから増えたカラー展開に話を戻しましょう。
山:そうだった。めっちゃ話逸れてる(笑)
えーっと、1991年にハンドになってから、ラスティックとブラックも順次仲間入りを果たします。ラスティックが93年で、ブラックが98年くらい。
廣:ブラックは遅いですね。私が生まれたのよりも後なんだ。ブラックの方が珍しいのはそういう理由も関係してるんですね。
山:昔は黒ってヨーロッパでは普段着に取り入れるには忌避されていたみたい。それがいろいろなブランドだったり野良着が出自のバブアーでも取り入れられるようになっていったのは日本の影響もあるのかもなぁと思います。
まあインターナショナルは昔から黒だったからわからんけどね。
廣:いわゆる黒の衝撃(※1)ですね。
※1 1981年、コム・デ・ギャルソンとヨウジヤマモトがパリコレにて発表したコレクションの新奇性と驚きを指してそう呼びます。全身黒で穴の空いた洋服やアシンメトリーのデザインなどは、当時のモードシーンでは考えられなかったものでした。
左からsage, navy, rustic, black。
全く異なる雰囲気を持っているので、ついつい色違いでも着たくなる。
廣:黒はクラシックだけじゃなく、モードやスポーティーにも着れて、シュッと引き締まる。ラスティックはブラウン系の色味なのでカントリーっぽさもありつつ、ビデイルだと丈感がすっきりしているので程よく抜け感もある感じがします。
どういう風に着てくのがいいんでしょう?
山:実は個人的には似合わなくて、最近はあまり着ていないモデルなんですよね(笑)
だけど巷で来ているのを見るとやっぱりかっこいい。
廣:ポピュラーなモデルだけあって、みなさん着こなしも上手ですよね。
山:そういえば、この前見かけたウーバーの配達員さんがネイビーのビデイルをピタピタで着てロード乗ってた。あれはすごいかっこよかったな。
廣:あー、いいですね。結構ジャストフィットが映えるモデル。ウーバーのリュックとの絵が思い浮かびます。テーラードジャケットに近いような感覚でバシッと着るとかっこいいですよね。
山:そうなんだよねぇ〜。
廣:でもね、私ね、4つポケに関してはオーバーサイズもありだと思ってるんです。
山:急に変わったね。
廣:やっぱり4つポケとハンドは別物として捉えてるんです。だって4つポケってハンドのビデイルに比べてちょっと丈長くないですか?
山:そうですね。
廣:なので丈がややあるぶん、サイズをあげて着て、身幅に少し余裕を持たせるような着方もありだと思います。私は普段40がジャストなんですが、実際にワンサイズアップの42の四つポケビデイルを着てますし。
廣:いやービデイルって本当に合わせるアイテム選ばないですよね。優秀。
山:パンツが太くても細くても、ミリタリーやワークアイテムでもドレスシャツでも。1枚目に選ばれるのはこの汎用性の高さも大きな理由の1つなんだろうなって思います。
廣:とはいえ、山的にこれっていう合わせるアイテムあります?
山:アイテムって言われると難しい・・。
2サイズくらい落とした34のターコイズしかビデイル持ってないので。コレ着るときは鮮やかなターコイズブルーを主役にするために暗めのアイテムで、シルエットもフツーな服あわせてるかな。
あんまり答えになってなくてすいません。
廣:なるほど。逆に私はサイズアップで着ていることもあって、バランス取るためにタック入りで少しワイドなウールスラックスなんかを合わます。パンツのディテールやシルエットなんかを強調するような着方をしたりしますね。主役にもバイプレイヤーにもなれる服ってすごいですね。
山:ビデイルの経験値は廣田さんの方が高いわ。ぜひご相談は彼に(笑)
廣:待ってまーす(笑)
とはいえ、ビデイルはいろいろ合わせやすいモデルなので自分の感性でいろいろ着てみた結果が全部正解な気もします。これもいい、あんな着方もアリかもなんて可能性が広がっていくのが楽しいですね。
ビデイルは初めて着るバブアーとして1着目で選ぶのももちろんおすすめだし、丈の長いモデルをお持ちの方にも2着目としてぜひ着てみていただきたいモデルです。ほんとかっこいいので。
山:行儀よくまとめたね(笑)
■ONLINE STORE 掲載商品
【Deadstock】 Barbour Bedale sage 3crest c34 @1993 e8c
【Turquoise】Barbour Bedale navy 2crest c42 @1986 e731c
Barbour Bedale rustic 3crest c40 @2000 e1034c
その他「Bedale」も入荷中! チェックは 〈こちら〉 から。
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